毎月のことば

2019

2019年のことば

十二月のことば

 改元の熱気がつい昨日のことのように感じられたのに、もう令和元年が終わろうとしています。時の流れは本当に速いものです。「師走」という名がピッタリですね。
 「師走」の語源を子供の頃は「先生が走るくらい忙しい」と思っていましたが、後になって「師匠の僧侶がお経をあげるために東西を馳(は)せる月」ということを知りました。「令和」の出典となった万葉集の時代から「しはす」と呼ばれていたとも言われています。
 師走も中旬になると「年の瀬」になります。川の早瀬のごとく時の流れが速く、毎年、あっという間に過ぎて行くのを感じています。年の瀬も押し詰まっていよいよ「大晦日」です。地球の影に月が隠れてしまう新月が月末だったため、旧暦では毎月の最終日を「晦日(つごもり)」と呼んでいました。晦日の中でも1年を締めくくる12月の最終日には大を付けて「大晦日(おおつごもり)」と呼ぶようになりました。ITの時代になってもこのような言葉はずっと残してほしいものです。
 最近は、多くの人が大晦日から新年にかけてスマホでやり取りをしています。家族でのんびりこたつにあたって、年越しそばやみかんを食べながら除夜の鐘を聞くのもいいかもしれませんね。家族の絆が深まる気がします。どうかみなさん良いお年を!

十一月のことば

 ラグビーワールドカップでの日本代表チーム「ブレイブ・ブロッサムズ」の快進撃は、私たちに勇気と感動を与えてくれました。日本戦に関わらず、台風被害を受けた被災者の方々へ黙祷する各国選手の姿も記憶に新しいところです。
 さらに、この大会は日常とは異なる様々な体験や気づきをもたらしてくれました。
 幸いにもスタジアムで生のプレーを見ることができましたが、野球やサッカーと違い敵味方のサポーターが交じり合って、自チームのトライに歓喜し相手チームの健闘を称える光景は、スタジアムに集うサポーター全員がともに一期一会の出会いを楽しんでいるかのようでした。家族連れや老夫婦の観客がピクニックさながらの気分でラグビーを観戦し、色々な国籍の人が全国各地に離合集散してはその地の文化や歴史を訪ねる様子も微笑ましく感じました。
 この盛り上がりをどう持続させていくかが今後の課題のようですが、最近忘れられている心のゆとりや互いを認め合う寛容の精神を、束の間でも味わうことができるラグビーならではの魅力は伝え続けてほしいと願っています。

十月のことば

 先月は、最大瞬間風速57.5 m/sとなった台風15号という大変大きな自然災害が発生しました。先月までに日本に上陸した数は昨年と同じですが、海上(地上)の最大風速が45m/sを超えるような非常に強い熱帯低気圧が増加する傾向にあります。今後も災害が全体として激化していくと想定され、これも地球温暖化の影響とも言われています。
 地球温暖化による気候変動を引き起こす大きな要因の一つに食品ロスと食料廃棄があります。ロスと廃棄がなければ各工程(原材料調達・生産・保管・処理・配送・消費・廃棄)で発生する色々な温室効果ガスが削減できるというもので、この取組みが活発化してきています。
 食品ロスについて我が身を振り返ってみると、料理を作ることに興味のある私自身は、食材をついつい買い過ぎ、調理し過ぎをしていたことで、廃棄している現実があることに気が付きました。10月は「食品ロス削減月間」、季節も秋。美味しい食材がたくさん店頭に並び、つい沢山買ってしまいがちですが、地球のことを良く考えて食品ロスを減らし、少しでも温暖化抑制に役立てばと思っています。

九月のことば

 9月は、明治初頭まで陰暦の長月と呼ばれていましたが、陰暦は現在使っている陽暦より一月遅れとなるので、陰暦で8番目の月を指す葉月が今の時期の月の名前になります。葉月の由来は、落葉や紅葉が始まる時期が「葉落ち月」と呼ばれるようになりそれから転じた、というのが有力だそうです。また、葉月は、台風の季節であることから「南風月」(はえづき)、稲穂が大きくなり張ってくることから「穂張り月」、中秋の月見から「月見月、観月」とも呼ばれています。このように月の名前にも、昔の人が自然を身近に感じながら共に暮らしていたことが表れているように思います。最近は残暑が厳しく、9月に落ち葉が始まる気配はありませんが、台風や稲穂の実りといった自然の営みは今も昔もあまり変わっていないので、木々をよく見ていると落ち葉に気づくかもしれません。
 昨今は、毎日の慌ただしさや都会暮らしが何かと便利過ぎていることから、自然に接して季節を感じる機会が少なくなってきていますが、中秋の名月であれば我が家からでも見られそうです。働き方改革の一環で早く帰って、たまには古来の風習ように秋空に輝く名月を愛でながら酒を酌み交わし、のんびりと季節を感じてみてはいかがですか。ちなみに、今年の中秋は9月13日(金)だそうです。残暑が和らぎ、晴れるといいですね。

八月のことば

 八月、夏真っ盛り。お盆休み、夏祭り、海水浴、甲子園、等々、八月はイベント目白押しです。長期連休で、仕事を離れてゆっくり?ひと休みする人も多いのではないでしょうか。たとえば、夕刻、日中の暑さが少し和らいできた頃に近くの夏祭りに出かけ、夜店の屋台を見ながらそぞろ歩き、子供たちが元気にはしゃぎ回る声を背に、ちょっと一杯飲んだり、食べたり、非日常の時間をゆっくり過ごす。いい感じですよね。歩きまわるのでウォーキングの歩数も稼げて日頃の運動不足も解消。これで仕事のやる気も復活?
 さて、最近、ワークライフインテグレーションという言葉を耳にします。これは、従来のワークライフバランスの考え方を発展させたもので、ワークとライフを別のものとしてではなく、どちらも人生の構成要素としてより良く統合することにより片方の充実をもう一方の充実にしっかり繋げていこう、というような考え方です。仕事の疲労回復に家籠りしてバランスをとるだけでなく、夏祭りの非日常に身をひたしたり、ウォーキング、スイミング、ヘルシーで美味しい食事、瞑想、趣味の仲間との語らい等々により十分な満足を得る。いつもの日々を、大切な人生の一コマであることを意識して少し工夫して過ごしてみる。これが仕事の充実と、ひいては豊かな人生に繋がっていくように感じます。
 暑い季節なので無理は禁物ながらも、心身が躍動する活動に挑戦してライフを充実させ、ワークの成果も拡大し、人生の満足度を上げる、そんな八月にしたいですね。

七月のことば

 6月からサッカー女子ワールドカップがフランスで開催されており、日本代表(なでしこジャパン)は2度目の優勝を目指し、熱戦を続けています。2011年6月に開催されたドイツ大会では決勝戦でアメリカ代表と対戦し、見事初優勝を果たしました。その年は3月に東日本大震災があり、世の中は暗いムードでしたが、優勝の快挙が日本中を明るくしてくれたことを、今でも記憶しています。
 サッカーは11人の選手で行うスポーツですが、12番目の選手としてサポーターが存在します。サポーターの熱い応援を受けた選手は一層力を発揮し、勝利と言う好結果を生むと言われています。会社で例えるならば、事業に直接関わる人が選手、事業を支える人やICTがサポーターと言うことができます。昨今、ICT技術がどんどん進歩し、業務や事業を変革する上で必要不可欠な時代になっています。この状況に乗り遅れることなくICT化を進めて事業をサポートし、事業に好結果をもたらしていくことが大切だと感じています。
 さて、なでしこジャパンの結果が気になりますが、今年9月にはラグビーワールドカップ日本大会、来年には東京オリンピック/パラリンピックと大きなスポーツイベントが続きます。私も競技場やテレビの前で1サポーターとして選手に熱い声援を送っていきたいと思います。

六月のことば

 6月は旧暦では水無月と呼びますが、なぜ梅雨時に水が無いのかと思う方も多いのではないでしょうか。水が無いのではなく「無(な)」が「の」にあたり、水の月という説。田んぼに水を引くため、本当に水がなくなってしまったからという真逆の説。それぞれ地域の事情で意味合いが異なっていたようです。
 それにしても毎日のように降る雨は、私たちを沈んだ気持ちにさせますが、一方で気温が上がり、恵みの雨を受け、美味しい食材が旬を迎える時期でもあります。ハウス栽培で一年中食べられるトマトですが、大地の香りがする路地物の格別なおいしさが安価で味わえ、また美味しい枝豆でビールを味わうのもこの時期ならではです。野菜に限らず穴子、鮎、海老、鰯、かんぱちなどの海産物。無花果、メロン、西瓜、サクランボ、マンゴーなど、デザートに事欠きません。

 今夜は早く帰り、うまいお酒を買い、旬の美味しい食べ物に囲まれながら、至福の時といきましょうか。

五月のことば

 「令和」最初の月を迎え新しい時代が始まりました。今年は5月1日が「天皇の即位の日」として祝日になったため、ゴールデンウイークが10連休となりました。4月に新年度を迎えて、就職、転職、異動などで新しい環境に飛び込んだり、環境は変わらないまでも、心機一転、新たな気持ちで取り組んだりして過ごした1ヶ月が終わりました。大型連休で、心身を休め、リフレッシュすることができたと思います。
 元号が変わり新しいスタートとなりましたが、経済に目を向けると、米中貿易摩擦により、世界景気を牽引してきた中国経済にも以前のような力強さはなく、日本では10月に消費税増税が控えています。新しい時代は始まったばかりですが、決して順風満帆ばかりとはいきません。AIなどの新しい技術を活用して、時代とともに変革して荒波を乗り越えていく必要があります。
 4月までは随所で耳にした「平成最後の」というキャッチフレーズが「令和最初の」と変わります。何をするにも新たな気持ちで取り組むことで、普段、何気なくしていることが、また違った見え方をしてくるかもしれません。そういう機会にしていきましょう。

四月のことば

 いよいよ平成最後の月となりました。そして新元号が「令和」と公表され、5月からは新しい時代が始まります。正月が2回あるような気分で、気が引き締まります。
 さて、今回は当社の規模(年商)をもとに平成史を振り返ってみます。  平成元年はまだメルコオーバーシーズの時代で、年商は34億円でした。日経平均株価が史上最高値の38,957円を記録し、消費税(3%)が始まりました。
 平成6年に100億円を超え、村山連立内閣が発足しました。
 平成15年に1,000億円を超え、日経平均株価がバブル後最安値の7,607円を記録しました。そして、当社が三菱電機トレーディングに社名変更した平成16年は1,454億円でした。この年にfacebookが誕生しました。
 平成19年に2,000億円を超え、公的年金の加入記録漏れが5,000万件以上となり、大騒ぎになりました。
 平成29年に3,000億円を超え、トランプ大統領が誕生しました。
 そして平成最後となる31年2月に当社創立40周年を迎えました。
 このように平成時代は当社にとってまさに成長期でした。明治、大正、昭和、平成に続く「令和」が、皆様にとって、当社にとって、ますますより良き時代となることを祈りたいと思います。
 「初春の令月にして、気淑く風和らぎ、梅は鏡前の粉を披き、蘭は珮後の香を薫らす」

三月のことば

 いよいよ3月、日に日に穏やかな陽の光もまぶしさを増してくるようになりました。季節の節目を表す二十四節気のうち、3月の節気で誰しも知っているのは春分ですが、もうひとつその前にやってくるのが「啓蟄(けいちつ)」。啓は「ひらく」、蟄は「土中で冬ごもりしている虫」の意味で、土の中の虫が地上に這い出てくる季節として立春から数えて3番目の節気にあたる3月6日頃を指すようです。大寒とか穀雨のように気候や気象からくる節気がほとんどのなかで、生き物の活動をモチーフにしているのはこの啓蟄だけではないでしょうか。
 ところが、今年はエルニーニョ現象が続いているせいか、暖冬の影響で虫の活動も早まっている様子。桜の開花も東京では平年より5日早い予想もあり、異常に早かった昨年よりは遅いとはいえ、これだけ暖冬が続くと季節感もずれてきてしまいます。多分、昆虫のほうが季節には人間よりも敏感で、まだ啓蟄ではないのに地上に出てきて驚いているかもしれません。
 人間にとっては暖冬のほうが過ごしやすいですが、人間の起こした異常気象で迷惑を被るのは人間だけに留まらないことを、節気を迎えるごとに考えさせられます。

二月のことば

 今年の節分は2月3日です。節分に恵方を向いて無言で食すると縁起が良いとされる巻寿司を、あるコンビニが恵方巻きとして2000年前後から販売し、今や、すっかり定着しています。1月中旬に農林水産省が、「フードロス」と呼ばれる食料廃棄問題への取り組みの一環として、恵方巻きの作りすぎを控えるようコンビニやスーパーの業界団体に要請したというニュースがありました。この要請に対して、業界側は1本当たりサイズを小さくするとか予約販売を増やす等の対策を取るそうです。一方では、日本全体のフードロスは年間646万トンもあるそうで、恵方巻きのロスを減らしても効果はほとんどないという意見もありました。
 同じような話を、年明けの賀詞交歓会でプラスチック業界の方から聞きました。某コーヒーチェーンがプラスチック製ストローを廃止すると発表しましたが、世界中で使用されているプラスチック全体の量からすれば、ストローの占める比率は微々たるもので大した効果はなく、本気でプラスチックごみを減らすのであれば、他に取り組むべきことがあるとのことでした。
 現在、2015年に国連で採択されたSDGs「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」に従って三菱電機グループでもいろいろな取り組みが始まっています。上記2つの事例は効果のほどはさておき、一消費者として環境問題について意識するきっかけになりました。

一月のことば

 新年あけましておめでとうございます。
 今年は、平成天皇のご退位、それに伴う元号改正と大きな行事が控えていますが、当社も創立40周年を迎えることとなります。信用調査会社では、創業30年以上の会社を「老舗」としており当社も老舗の一員となっています。古くから続いているものの中に俳諧があります。その俳諧に「不易流行」という言葉があります。いつまでも変化しない「不易」と、時代に応じて変化する「流行」が根本において同じということを表しており、時代が変ったのに古くからの法則や方法に縛られていると衰退してしまうし、変えてはいけない部分を変えてしまうとあっという間に滅びてしまう、ということを表しています。このような教えがあるからこそ俳句は長く続いているのでしょう。私達も、変えてはならないコアはしっかり残し、変えるべきことは果断に変え、変えたものもまたコアの一部として残してゆけば50年、100年と続く会社になって行くのでしょう。私達一人一人も同じだと思います。
 皆さんも新年を迎え新たな気持ちで、変わらぬ思いを持ちながらも新しい変化に挑んでみてはいかがでしょうか。